研究活動・大学院 Research activities・Graduate School
公衆衛生看護学は、個人や家族単位の健康のみならず、地域やコミュニティレベルの健康を組織的に向上させるためのエビデンスの生成や発展に
資する実践的な学問です。
健康増進や疾病予防、療養支援など、人々の暮らしに関わるあらゆる分野との連携や共同、それらを統合した学際的で複合的な学問領域です。教育や研究活動を通じた社-学連携の推進にも力を入れています。
公衆衛生看護学講座 定例研究会(月2回開催)
当講座の定例研究会は、訪問看護領域と合同で開催しています。外部に開かれた研究の場としてご参加いただくことが可能です。
開催予定についての詳細は、こちらまで。
主な研究テーマ
当講座では、看護学系のみならず、社会学や疫学など研究テーマや研究疑問への接近方法に応じて多様なバックグラウンドを持つ学外の研究者との
共同研究のほか、研究対象の患者さんやご家族とともに研究チームを構成する当事者参加型研究にも取り組んでいます。
【受託研究】健康しが県民意識調査
- 2018年には、滋賀県からの受託研究事業として、寿命及び健康寿命が長い滋賀県民の健康意識を調査するため、インタビュー調査を実施しました。
- 研究の結果として、男性の場合は、健診結果などのデータを主体的に判断しながら、やりたいことが実現できているかを、女性は、育児、家事、仕事など自身の役割を「いつもどおり」果たせているか、人との関わりがうまく取れるかを健康感の基準とする傾向があることがわかりました。
- 成果物として、報告書と啓発用パンフレットを作成しています。
- 詳細は滋賀県のホームページもご覧ください。
高齢期に想定されるリスクを考え、“幸せな人生”のあり方をアップデートするためのリスク対応能力涵養のためのアナログゲーム開発事業
- 日本では、平均寿命の延伸に伴い高齢期が長期化しており、医療や介護、看取り、遺産相続等多くのライフイベントに対して、自身のことだけでなく、老親や配偶者の人生の意思決定をする必要があります。
- しかし実際に高齢期のリスクを知り、学ぶ機会は少ないのが現状です。本事業では、高齢期のリスクを考え、"幸せな人生"のあり方をアップデートすることを目的としたアナログゲームを開発しました。アナログゲームを用いて高齢期のリスクに関する知識と、意思決定を行うための力量形成を目的とした介入研究を行っています。
- 平成30年度は、UDCBK社会実験事前調査事業の受託事業費にて、プロトタイプの開発を行い、草津市民(滋賀県)を対象とした市民公開講座を開催しました。
- 本事業は、宝塚大学東京メディア芸術学部の渡邉 哲意先生、石川 雄仁先生と共同で行っています。また、ゲーム開発にあたってご助言いただきました、永田宏和理事(NPO法人プラスアーツ)、井上明人先生(立命館大学)、同志社大学ボード研究会の皆様には心より感謝申し上げます。
自然言語処理を用いた医療情報ニーズの探索的研究
人工知能(AI)による褥瘡画像診断モデルの構築
- 褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。一般的に「床ずれ」ともいわれています。(出典:一般社団法人日本褥瘡学会)
- 要介護者のQOLの向上、介護者の負担軽減、地域で働く医療・介護職の支援ツールとして、褥瘡の画像データを機械学習することで、画像から褥瘡を早期発見する人工知能(AI)のモデル構築を目指しています。
- 本事業は、2018年度「関西アーバン共同研究助成金」の助成をうけ実施している、画像認識に特化した人工知能開発企業である株式会社tiwakiとの共同研究です。
- 2018年度「関西アーバン共同研究助成金」に関するプレスリリース
血友病患者や家族に関する調査研究
「特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権」と、看護学や社会学などを専門とする各研究者委員によって組織された「患者・家族調査研究委員会」で、協働で取り組んでいる調査研究です。
- 「生きなおす」ということ-患者・家族調査研究委員会報告書-
- 血友病患者が日々を過ごす知恵と苦心 ヘモフィリア患者のライフスキル調査
報告書
大学院
当講座への進学や研究について相談を希望される方は、お問い合わせのページから、当方までぜひご連絡ください。
当教室の研究内容や修士課程のプロラムについてご紹介いたします。
下記に、修士課程に進学された皆さんの声を掲載しています。
大学院生の声
医学系研究科(M1)恋水 彩有理さん
- 勤務、子育てをしながら、大学院進学を決意しました
- 大学院進学のきっかけ
行政保健師は地域を看ていくことを必要とされていますが、私の場合は個別ケース支援の経験が多く、地域のデータから分析、地域課題の抽出、研究を行うことに苦手意識を持っていました。
エビデンスに基づいた保健師活動をするうえで、大学院に進学し研究室に所属しながら研究をして行きたいという思いがありました。
進学については数年間迷っていましたが、本研究室の卒業生さんに相談する機会がありました。アドバイスをもらい、迷っているなら自分なりにできる方法を模索しながら進学しようと決意しました。 - 入学してからの日々
まだ入学して数か月のため、研究についてはこれからです。修士課程は授業に出席する時間を捻出することも必要となるため、家族と相談しながら出席するようにしています。また、講義を受ける中でほかの院生さんと共に学びが広がり、社会人として経験してきたことが、学びの深さをアシストしてくれていると感じています。
忙しいですが、とても楽しく充実した日々を過ごし、進学を決意してよかったと感じています。 - 進学を検討している方へ
滋賀医科大学大学院では、先生方が社会人の勤務状況を考慮した授業開講や、長期履修制度など、社会人学生の学びに寄り添ってくださっていると感じています。また、公衆衛生看護学領域の伊藤教授をはじめ、先生方は研究初心者の学生に対しても丁寧にご指導いただき、相談にものってくださります。
家庭では子どもと過ごせる時間は正直減っていますが、わが子は私の勉強している姿に刺激を受けたり、応援してくれたりと心強い存在です。
進学を迷っておられる方は、それぞれの状況に応じた学び方があると感じていますので一度ご相談されてみるといいかと思います。
医学系研究科(M2)谷口 涼音さん
- 私は大学生のころから保健師に興味があり、保健師課程に在籍していました。大学で学んでいくうちに研究に携わってみたいと思うようになりました。特に興味があったのは保健師に関わる分野である疫学や公衆衛生などであったため、公衆衛生看護学講座への進学を決めました。
私は大学卒後すぐに大学院に進学しているため、臨床での経験はありません。それに加え、研究についても知らないことがたくさんあったので、研究についていけるか不安に思っていました。しかし、先生方や院生さんたちが勉強や研究を支えてくださるので、特に不都合なく学ぶことができています。
自身の領域での研究会だけでなく、様々な看護を専門にしている方や多くの経験をされている方とのグループワークなどで交流する機会があります。交流のなかでその人の看護や研究への熱意に触れることで、研究者としてだけでなく医療者としての成長にも繋がっており、現在では卒後すぐに大学院に進学してよかったと感じています。
医学系研究科(修了生)清田 彩歌さん
- 私は大学卒業後、看護師として内分泌内科で勤務していました。膠原病で病気と付き合いながら地域で暮らすことに対し、不安を感じ退院される患者さんと関わるなかで、保健師として公衆衛生の立場から人々に寄り添える仕事がしたいと思うようになりました。そのため、公衆衛生看護や研究の基礎を学び、看護職として研究的な視点を持つために進学を決意しました。大学院では、自身よりも看護職としての豊富な経験をお持ちの方々や多職種の方々が院生として沢山在籍しておられ、同じ院生として学びを共にする中で、様々な視点から看護に対する視点や考え方を学び、深めることができました。研究においても、大手IT企業の御協力も頂くことができ、進学しなければ学ぶことができなかったであろうビックデータを用いた研究に取り組ませて頂くことができました。
現在は、都道府県の職員として本庁で勤務しております。施策構築に携わる仕事を行っているため、多様な関係機関の方との関わりも多く、様々なデータを複合的な視点で分析し検討することが求められていると感じる場面も多々ありますが、大学院での学びと経験を生かし、日々業務に取り組んでいます。今後は、研究的な視点からも自身の業務に励み、さらにより良い施策の実施へ向けて取り組んでいきたいと考えています。
過去の修士論文のテーマ
- ・認知症者介護家族の困難と悩み : Web上投稿型質問応答サイトへの投稿質問を用いて
- ・子育て世代における「健康の自己評価」を規定する健康の概念に関する質的研究
- ・乳幼児の医療機関受診行動における保護者の不安と就労との関連
- ・全国がん登録を用いたがん予防の効果を高める地域保健活動基盤に関する生態学研究
- ・厚生労働統計を用いた日本における高齢者終末期に関連する状況と課題~看取りケアと死亡場所に着眼して~
- ・急性期病院における褥瘡発生の実態解明と関連要因の検討:電子カルテを用いた後ろ向き観察研究